n4n44の偉そうなブログ

まだまだ小僧ですが、色々と偉そうに話します。

『虐殺器官』を観ました。

お久しぶりです。

虐殺器官』を観た感想を書きたいと思います。

アニメ版『虐殺器官』ではあるが、『虐殺器官』のアニメではない。

意味わかりませんが、この見出し恰好よくないですか?

それはともかく、要は原作そのままアニメにした訳ではないですよ、という事です。

かなり大胆に設定が変更されています。また確かに『虐殺器官』なんですが受ける印象は原作とは少し違いました。(悪い意味ではなく。)

具体的にどう変わったか、そしてどうして印象が変わったかを、この記事では書いていこうと思います。それと、アニメ版『虐殺器官』を「アニ殺器官」、アニメと原作両方を指すときは『虐殺器官』、原作は原作で書いていきます。

確かに地獄はそこにあった。

意味わかりませんが、この見出し文学的じゃないですか?

虐殺器官』で地獄と言えば、アレックスだと思います。第一部で死んでしまうのは変わりありません。

しかし、原作では自殺ですが、「アニ殺器官」では他殺、元准将暗殺の任務で突如錯乱しクラヴィスに射殺されます。なんとアレックスは戦闘適応感情調整のミスでPTSDになっていました。

結果自体は変わりないですが、この変更でクラヴィスが殺意の所在に疑問を持つ理由により説得力がついたのではないでしょうか。(詳しくは観よう)

「母」を殺すという決断。

意味わかりませんが、この見出しオシャレじゃないですか?

原作ではたびたび描かれたクラヴィスの母と死者の国は「アニ殺器官」では全く描かれません。母なんて一回も言ってないはず。

後で書きますが、これで「アニ殺器官」は「アニ殺器官」になったと僕は思います。

カフカはドイツ語で小説を書いた。

意味わからないし、完成度も低い見出しですね。

チェコ編はかなり展開が変わっています。

まずルツィアの名前が少し変わってます。そして、ルツィアからクラヴィスカフカの墓を案内する提案をします。ついでに、ルツィアはルーシャスに言われて、クラヴィスを店に連れて行きます。

ラヴィスの母の設定がない上に戦争は啓蒙というルーシャスの話が無く、人間は利他的行動を取るようにプログラムされているという話も無くなっています。

諸々の展開が合理的になりましたが、クラヴィスがルツィアを追いかける理由が惚れたからという何とも深みの無い物になってしまっていました。(もしかしたら僕の勘違いかも。)

ジョン・ポールは虐殺の文法を話した。

「アニ殺器官」の印象が原作と少し違う理由は多分、演出にあると思います。

原作ではラストの解釈は、大きく2つありますね。1つはクラヴィスの死者の国への憧れ。(僕はこっちが好きです。)もう一つはジョン・ポールがクラヴィスに虐殺の文法で語りかけていた。

「アニ殺器官」では、おそらく後者を前提にしています。そもそも前者が存在しえない設定ですからね。

原作において後者ではないとする根拠として、虐殺の文法は個人に対しては効果を持たないという設定がありました。

しかし、「アニ殺器官」のチェコ編ではジョン・ポールがクラヴィスとの会話の中で、今この会話にある文法を仕込んだ、と語っています。(虐殺の文法とは別物とも)そしてクラヴィスの感覚に変化が起きる演出。

わざわざこのセリフを入れたのは多分個人に働きかける文法が存在し、ラストの動機付けを狙っていたのではないでしょうか。

これはあくまで僕の妄想ですが、きっとジョン・ポールはおそらく心のどこかにアメリカ、先進国への恨みがあった。(そもそもサラエボの悲劇も先進国の横暴が無ければ起きなかったと考えた?)しかしジョン・ポールは復讐する気はなかった。(彼は人間が理性的である事を望んでいた)

そこにアメリカの暗殺部隊が現れる。恩を仇で返すようなアメリカの勝手さに呆れ、復讐を考え始める。

スキャンダルの塊である暗殺部隊なら虐殺の文法の起点として有効と考え、復讐の備えにクラヴィスに思考を誘導する文法(良心の麻痺あるいは言われた事に従いたく無くなる?)を仕込む。

最期に、アメリカが虐殺の被害者を食い物にする気であると分かったジョン・ポールはクラヴィスの背中を押して虐殺の文法を英語で広める。(虐殺の贖罪、アメリカへの制裁?)

こんな妄想をしました。

蝶(ルーシャスの店の事じゃないよ。)

各所に出てきた蝶(蛾?)はどんな意味があったのか気になりますね。

まとめ

期待が大きすぎたのはありますが、短所が目立ちます。

とはいえ、原作の中からSFアクション要素とテーマの部分を抽出し、文章でしか出来ない演出と描こうとする結末に関わらない要素を大胆に取り除く。そして限られた時間に収め、そのうえ原作の弱い部分を補完した。

これだけやってのけた製作陣はかなり「強い」と思いますし、映画も良作といえます。

万人に向けておすすめするような内容では間違ってもないですが、原作読者は一度観てみる価値がある映画でした。

関係ないですが。

帰ってきたヒトラー』を読みます。多分読み終わったら感想を書きます。